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東京地方裁判所 昭和39年(レ)129号 判決 1966年5月23日

控訴人 岡部ソト

右訴訟代理人弁護士 堀家嘉郎

右訴訟復代理人弁護士 桑田勝利

被控訴人 山本雪江

被控訴人 吉田勤

右両名訴訟代理人弁護士 成毛由和

主文

一  原判決をつぎのとおり変更する。

1  被控訴人らの原審における請求を棄却する。

2  被控訴人山本雪江は、控訴人に対し、別紙目録(一)記載の土地につき東京法務局中野出張所昭和三七年一一月二七日受付第二〇三二五号をもってなされた地役権設定仮登記の抹消登記手続をせよ。

3  控訴人の反訴請求中その余の請求を棄却する。

二  当審における被控訴人らの請求について

1  被控訴人らが別紙目録(一)記載の土地につき囲繞地通行権を有することを確認する。

2  控訴人は別紙目録(一)記載の土地につき被控訴人らの通行の妨害をしてはならず、また、右土地の上に建造物を築造し、または擁壁を設置してはならない。

三  訴訟費用は、本訴、反訴を通じ第一、二審とも二分し、その一を控訴人の、その一を被控訴人らの負担とする。

事実

第一当事者双方の申立て

一  控訴人

1  原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

2  被控訴人らの原審における請求を棄却する。

3  被控訴人らは別紙目録(一)記載の土地を使用してはならない。

4  被控訴人山本雪江は、控訴人に対し別紙目録(一)記載の土地につき東京法務局中野出張所昭和三七年一一月二七日受付第二〇三二五号をもってなされた地役権設定仮登記の抹消登記手続をせよ。

5  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

との判決を求め、被控訴人らの当審における請求に対して請求棄却の判決を求めた。

二  被控訴人ら

本件控訴を棄却するとの判決を求め、当審において、原審における請求を第一次的請求とし予備的につぎのとおり請求を追加した。

(第二次的請求)

1 被控訴人らが別紙目録(一)記載の土地につき囲繞地通行権を有することを確認する。

2 控訴人は、前項の土地につき被控訴人らの通行の妨害をしてはならず、また、右土地の上に建造物を築造し、または擁壁を設置してはならない。

第二被控訴人らの主張

一  本訴について

(第一次的請求の原因)

1 控訴人岡部ソトは別紙目録(一)記載の土地(本件(一)の土地という。)を所有しているもの、被控訴人山本雪江は別紙目録(二)記載の土地(本件(二)の土地という。)を所有し、また、被控訴人吉田勤は別紙目録(三)記載の土地(本件(三)の土地という。)を所有し、その土地の上にそれぞれ建物を所有し居住しているものである。

2 本件(一)、(二)、(三)の各土地は、もと小熊佐五郎所有にかかる一筆の土地の一部であったが、同人は終戦後これを分筆譲渡することとし、その際本件(二)、(三)の各土地が袋地となるので中央に巾四メートル、長さ一九メートルの私道を残すことにした。

3 ところで、小熊佐五郎は、昭和二四年五月一三日被控訴人山本雪江に対し本件(二)の土地を、また、昭和二四年一一月被控訴人吉田勤の父、吉田五郎松に対し本件(三)の土地をそれぞれ売渡したが、その際小熊佐五郎と被控訴人山本雪江、吉田五郎松の間に本件(一)の土地を承役地、各買受土地を要役地とする明示もしくは黙示の通行地役権設定契約が締結された。そして、被控訴人吉田勤は、その後吉田五郎松の死亡によりこれを相続し、右通行地役権を承継取得した。

4 また、被控訴人山本雪江は本件(二)の土地を買受け後、また、吉田五郎松は本件(三)の土地を買受け後、同人死亡後は被控訴人吉田勤において占有を承継し、いずれも平穏公然善意に自己のために継続して本件(一)の土地を通行してきたので、被控訴人山本雪江は昭和三四年五月一三日、被控訴人山本勤は昭和三四年一二月一日、それぞれ時効により通行地役権を取得した。そして、被控訴人山本雪江は、昭和三七年一一月二七日東京法務局中野出張所同日受付第二〇三二五号をもって時効による通行地役権取得の仮登記手続をなした。

5 しかるに、控訴人は、昭和三三年一二月一九日本件(一)の土地を小熊佐五郎から買受け、その所有権を取得し、被控訴人らの右通行権を無視して本件(一)の土地にコンクリート塀を設ける計画をたて、被控訴人らの通行使用を妨害しようとしている。

6 よって、被控訴人らは、控訴人に対し、設定契約による通行地役権の取得または時効による通行地役権の取得を主張して第一次請求のとおりの判決を求める。

(第二次的請求の原因)

7 仮りに、上記3または4の主張が認められないとしても、本件(二)、(三)の各土地は、別紙図面のとおり、控訴人らの所有地に囲繞せられ公道に通じていないものなるところ、小熊佐五郎は、被控訴人らに右各土地を譲渡するにあたり、これらの土地が袋地になることを避けるため、前記のとおり私道を設けたのであるから、被控訴人らは少くとも本件(一)の土地につき囲繞地通行権を有する。

8 仮りにそうでないとしても、本件の土地は建築基準法四二条にいう道路であって、同法四四条一項により何人といえども同地上に建築物を築造し、または擁壁を設置することはできない。したがって、被控訴人らは、前記のようにこれに重大な利害関係を有する者として条理上ここを通行する権利を有するとともに、控訴人に対し私法上の右築造等禁止請求権を有する。

9 よって、被控訴人らは、控訴人に対し、予備的に第二次的請求どおりの判決を求める。

(抗弁に対する答弁)

1 控訴人が本件(一)の土地を取得した当時、被控訴人ら主張の通行地役権の取得登記がなされていなかったことは認めるが、控訴人は右登記の欠缺を主張しうる第三者にあたらない。すなわち、被控訴人山本雪江において、本件(一)の土地に建築線を引くことにより建築基準法による道路位置の指定を受け、また、同被控訴人および本件(一)の土地の両側の居住者(被控訴人吉田勤を含む。)はすべてこれに面して玄関を設け、本件(一)の土地を公道に至る道路として使用してきた。したがって、控訴人は道路として公法上、私法上の制限ある本件(一)の土地を取得したというべきである。そして、かかる場合においては、登記なくして通行地役権をもって道路敷地の新所有者に対抗しうると解すべきであるから、控訴人は対抗要件の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者に該当しない。

2 控訴人主張の新道がもと下水溝であったものを東京都において埋立てたものであることおよび被控訴人ら所有の本件(二)、(三)の各土地の西側が現在右新道に面していることは認めるが、新道が、公道であることは争う。のみならずかような場合においては、それが袋地又は準袋地利用の必要を充たしうるものであるか否かが考慮さるべきであり、かかる観点からすると、控訴人主張の下水溝の埋立地(新道)では本件(二)、(三)の各土地を宅地として利用する価値は全く失われるし、また、新道は建築基準法四二条一項の道路に該当しないので被控訴人は本件(二)、(三)の各土地上の建物の増改築も不能になる。したがって、被控訴人らの本件(一)の土地を通行する権利は新道ができたことによって失われない。

二  反訴について

(反訴請求原因に対する答弁)

1 反訴請求原因事実は認める。

2 しかし被控訴人らは本件(一)の土地を通行する権利を有している。この点に関する主張は本訴の請求原因と同じである。

3 仮りにそうでないとしても、控訴人が被控訴人らの本件(一)の土地の通行を拒否するのは権利の濫用である。すなわち、本件(一)の土地の通行を拒否されるときは、被控訴人らは、日常公道への通行に不便な上、不慮の災害が発生した場合生命身体の危険を生ずるばかりでなく、前記のように各所有家屋の増改築もできなくなって著しく損害をこうむる。これに反し、控訴人は、本件(一)の土地を道路として相応の価額で買い受けたのであるから、被控訴人らの通行を許容しても何等の損害を生じない。

第三控訴人の主張

一  本訴について

(請求の原因に対する答弁)

1 請求原因第1項の事実は認める。

2 同第2項の事実は認める。

3 同第3項の事実のうち、被控訴人らが本件(二)、(三)の各土地をそれぞれ小熊佐五郎から買受けたことは認めるが、その余の事実を否認する。

4 同第4項の事実は否認する。

地役権は継続かつ表現のものに限り時効により取得しうるところ、通行地役権は不継続の性質のものであるから時効取得できない。

5 同第5項の事実のうち、控訴人が小熊佐五郎から本件(一)の土地を買受けその所有権を取得したことは認めるが、その余の事実は否認する。

6 同第7項の事実は否認する。

7 同第8項の事実中被控訴人山本雪江が本件(一)の土地に建築基準法による道路位置の指定を受けたこと、同被控訴人および本件(一)の土地の両側の居住者がこれに面して玄関を設け、本件(一)の土地を通路として使用してきたことは認めるが、その余を争う。

(抗弁)

1 仮りに被控訴人らが小熊佐五郎との間に通行地役権設定契約又は時効により通行地役権を取得したとしても、これをもって第三者である控訴人に対抗しうるためには登記を要するところ、右の登記を欠くから、控訴人に対抗できない。

2 仮りに被控訴人らに本件(一)の土地を通行する権利が生じたとしても、本件(二)、(三)の各土地はその西側に現在新たにできた別紙目録(四)記載の土地である公道(以下新道という。)に面することになったので、被控訴人らはもはや従来の公道に至るため本件(一)の土地を通行する必要はなくなった。すなわち、新道は、もと下水溝であって、被控訴人らは本件(一)の土地を通行する以外に公道に通ずる手段がなかったので、控訴人は被控訴人らの囲繞地通行権を尊重して本件(一)の土地の通行を放任してきたが、右下水溝は東京都において昭和三七年一〇月頃埋め立てて公道になったものである。仮りに、右新道が公道でないとしても、都または区の公有地であって、現在は住民が通行の用に供しているのであるから、囲繞地通行権は「囲繞地ノ為メニ損害最モ少キモノヲ選フコトヲ要ス」(民法二一一条一項)との趣旨にかんがみ、被控訴人らは、本件(一)の土地についてはもはや通行権はなく、新道を通行すべきである。

二  反訴について

(請求の原因)

1 本件(一)の土地は控訴人の所有である。

2 被控訴人らは、本件(一)の土地に通行権がないにかかわらず、これをあると主張してここを通行使用している。

3 しかも、被控訴人らは、本件(一)の土地につき東京法務局中野出張所昭和三七年一一月二七日受付第二〇三二五号をもって地役権者被控訴人山本雪江、原因昭和三四年五月一三日通行地役権の時効取得、目的通行、要役地本件(二)の土地、とする旨の地役権設定仮登記手続をなし、同仮登記が存在する。

4 よって、控訴人は、被控訴人らに対し本件(一)の使用禁止を、被控訴人山本雪江に対し右仮登記の抹消登記手続を求める。

第四証拠関係 ≪省略≫

理由

(本訴第一次的請求に対する判断)

東京都中野区神明町八番の一一ないし一七および本件(一)の土地(以下、本件(一)ないし(三)以外の土地は地番のみで示す。)は、もと訴外小熊佐五郎所有の同番の六の一筆の土地であったが、同訴外人が終戦後これを順次分筆し譲渡したこと、被控訴人山本雪江が昭和二四年五月一三日同訴外人より右一筆の土地の南端にある本件(二)の土地を買受け、また、被控訴人吉田勤の父吉田五郎松が同年一一月同訴外人より右一筆の土地の南西端にあたる本件(三)の土地を買受け、同人の死亡により被控訴人が相続し、その所有権を承継取得したことおよび同訴外人が右譲渡にあたり本件(二)、(三)の各土地が袋地となるので中央に巾四メートル長さ一九メートルの土地部分を私道として残したことは当事者間に争いがない。

ところで、被控訴人らは、右買受けにあたり、本件(一)の土地につき小熊佐五郎との間に通行地役権設定契約が締結されたと主張し、原審および当審における被控訴人山本雪江本人尋問の結果によれば、前記中央の私道はその後両側より多少侵触されて狭くなったが本件(一)の土地に該当することおよび小熊佐五郎が本件(二)の土地を被控訴人山本雪江に売渡すにあたり、同被控訴人に対し、「公道に通じる道をつくる」と言い、また、吉田五郎松に本件(三)の土地を売渡すにあたり同人に対し、「ここ(中央の私道)を通ってもよい」と言ったことが認められるが、これらの事実は、後に述べるように本件(二)、(三)の各土地が分譲の結果袋地となるので小熊佐五郎において本件(一)の土地に被控訴人らの囲繞地通行権があることを確認したにすぎないものと解するを相当とし、これをもって登記義務を伴うごとき通行地役権を設定したものとは認めることはできず、他に被控訴人らの右主張事実を肯認するに足る証拠はない。

さらに、被控訴人らは、本件(一)の土地の通行地役権を時効により取得したと主張するが、地役権は「継続かつ表現のものに限り」時効取得の対象となるものであり、通行地役権において「継続」の要件としては単に長年にわたって通行してきたというだけでは足りず、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路が開設され、しかもその通路の開設が要役地となるべき土地の所有者によってなされることを要すると解するを相当とする(最判昭和三〇年一〇月二六日民集九巻一四号二〇九七頁、同昭和三三年二月一四日民集一二巻二号二六八頁参照)ところ、本件において、被控訴人らまたは吉田五郎松が本件(一)の土地を通路として開設したと認むるに足る証拠はない。

したがって、被控訴人らの第一次的請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がないといわなければならない。

(本訴第二次的請求に対する判断)

≪証拠省略≫によれば、被控訴人山本雪江が小熊佐五郎から本件(二)の土地を買受けた当時、八番の一一の土地に二棟の家屋が建てかかっていたほか、小熊の所有地は一面の空地であったこと、本件(二)の土地は三角形の形状をなす土地で、その東側および南側は他人所有地に接し、北側は小熊が他に分譲する予定地でその北端は東西に通ずる公道に接し、西側は巾約一メートル深さ約二メートルの下水溝に接し袋地となる状況であったこと、そこで、小熊が右譲渡にあたり、被控訴人山本に対し上記の公道に至る道を設けることを約束したこと、小熊が八番の一一の土地、八番の一二の土地、八番の一六の土地、八番の一七の土地、八番の一四の各土地につづいて建物を建て、その結果、本件(一)の土地が中央に通路として残ることになったこと、小熊が右各建物を土地付で売却し、昭和二四年一一月八番の一七の土地である本件(三)の土地を被控訴人吉田勤の父吉田五郎松に売り渡した(もっともその旨の所有権移転登記手続はなされず、控訴人が八番の一二の土地を買受けた際、便宜上、昭和三三年一二月一〇日に小熊佐五郎の相続人らから控訴人へ、ついで昭和三四年一月一三日に控訴人から被控訴人吉田勤へそれぞれ売渡された旨の登記がされた。)こと、小熊が吉田五郎松に本件(三)の土地を売渡すに際し本件(三)の土地が本件(一)の土地によるのほか公道に通ずる路がなかったので本件(一)の土地を通路として利用するよう、述べたこと、その後、昭和三三年一二月一〇日頃小熊が、本件(一)の土地を八番の一六の土地、八番の一二の土地とともに控訴人に売渡したことがそれぞれ認められ、他に以上認定を左右するに足る証拠はない。

右事実によれば、本件(二)、(三)の土地が分譲の結果袋地となるので、小熊は、右分譲にあたり譲受人である被控訴人らのために本件(一)の土地を公道に通ずる私道として残しここに被控訴人らの囲繞地通行権があることを確認したものと認めるを相当とする。

ところで、控訴人は、現在本件(二)、(三)の各土地はその西側に新道ができ、公道に面するに至ったので、もはや被控訴人らの上記囲繞地通行権はなくなったと主張するが、およそ袋地所有者の囲繞地通行権は、その土地に相応する利用を全たからしめるために認められているものであるから、新たに通路ができた場合において従来の囲繞地通行権が存続するか否かはその通路が袋地利用の必要を充たしうるものであるか否かによって決めらるべきであると解するを相当とする。

これを本件についてみるに、≪証拠省略≫によれば、新道は公有地であり、もと深さ約二メートル、巾約一メートルの開渠下水溝であったが、東京都においてこれを埋立て暗渠の下水道とすることとし、昭和三八年二月都内下水道工事計画の一環としてこれを設計し、同年四月から工事に着工し、同年七、八月頃完成したものであること、その結果、本件(二)の土地は西側約一九メートル、本件(三)の土地は西側約四メートルにわたってそれぞれ右新道に面するに至ったこと、この新道を本件(二)の土地から二二・七メートル、本件(三)の土地から約一八メートルそれぞれ北進すると東西に通ずる巾員六・二メートルの前示公道に通じ、また、本件(二)、(三)の各土地から約二百数十メートル南進すると東西に通ずる巾員約一〇メートルの公道に道ずること、新道の巾員は一・一ないし一・二メートルで、その西側約三分の一はコンクリートの浅い斜側溝、東側は砂利を敷き平坦になっており、一人が自転車で通行することはほぼ可能であるが、雨傘をさして歩いたり、大人二人が並んで通行するのはやや困難な状況であること、新道はこの上を附近の住民が通行してはいるが本来、東京都中野区役所建設部管理課において公共溝渠として、管理しておるものであり、しかもその巾員が標準に達しないため今後とも道路として都知事の認定を受けうる底のものでないこと、新道は、建築基準法四二条所定の道路に該当しないので、本件(二)、(三)の各土地に建物を建築し、又は増改築することが不可能であり、さらに、新道の下には大きな下水管があってここにガス、水道管を埋めたり電柱をたてたりすることは不可能であることがそれぞれ認められ、他に以上の認定を覆すに足る証拠はないからこれらの事実を総合して考案するに、控訴人主張の新道は公道とは認められないばかりでなく、本件(二)、(三)の各土地の所有者である被控訴人らが右新道の通行使用のみに制限されるとすれば、その巾員等利用状況および管理状況からみて、本件(二)、(三)の各土地の宅地としての利用は著しく制約されることが容易に予想され、右の新道が本件(二)、(三)の各土地の利用の必要を充たしうるものとは到底認めることができず、かかる新道ができたからといって上記本件(一)の土地についての被控訴人らの囲繞地通行権はなくならないというべきである。したがって、この点に関する控訴人の前記抗弁は採用できない。

そうすると、被控訴人らは本件(一)の土地に囲繞地通行権を有するというべきところ、控訴人においてこれを争っていること本訴上明らかであり、かつ、≪証拠省略≫によれば、控訴人が本件(一)の土地の入口を扼する位置に店舗を構え、将来その拡張のため本件(一)の土地に建造物もしくは擁壁を設置する計画があることが認められるから、被控訴人らの右囲繞地通行権の確認ならびに建造物もしくは擁壁設置の禁止を求める第二次的請求は理由があるというべきである。

(反訴請求に対する判断)

反訴請求原因事実は当事者間に争いがなく、そして、被控訴人らは囲繞地通行権に基づき本件(一)の土地を通行使用しうるものであるが、しかし通行地役権を有するものではないこと前示のとおりである。したがって控訴人の反訴請求のうち被控訴人山本雪江に対し、本件(一)の土地につき東京法務局中野出張所昭和三七年一一月二七日受付第二〇三二五号をもってなされた地役権設定仮登記の抹消登記手続を求める部分は理由があるが、その余の請求は理由がないといわなければならない。

(結論)

よって、原審における被控訴人らの請求はいづれもこれを棄却し、控訴人の反訴請求のうち仮登記の抹消登記手続を求める部分を認容し、その余の請求を棄却すべく、これと異なる原判決を変更することとし、なお、当審における被控訴人らの請求は理由があるから認容することとし、民事訴訟法三八六条、九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉本良吉 裁判官 内藤正久 筧康生)

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